はけの森美術館

かげもまた光なり―中村研一の色―

かげもまた光なり―中村研一の色―

 「かげもまた光なり―中村研一の色―」展は、タイトルにある通り中村研一作品の「色」に焦点を当てながら、当館コレクションをご紹介するもので、特に中村が小金井に居を構えてからの戦後作品を中心に構成されています。こちらに、展示される作品の中から2点の作品についてご紹介します。

作品紹介1

作品紹介1


中村研一《婦人像》1945年 油彩・カンヴァス
小金井市立はけの森美術館所蔵
 第二次世界大戦が終戦を迎えた1945年。その年の12月に中村研一は小金井へ移り住みますが、その直後に描かれたのが本作です。作品には、戦前からの中村作品の特徴である黒く力強い輪郭線が確認でき、モデルのフォルムやスカートのひだを着実に捉えながら画面全体を引き締めています。一方で、中村の後期作品の特徴、本展のテーマでもある色づかいにも注目することができるでしょう。ワンピースの明るいピンク色が、モデルの紅潮した頬の赤みと組み合わさって、その初々しさと若々しさをより一層際立たせています。
 1945年という、変化と連続性の入り乱れた年を象徴するかのように、本作は戦前と戦後の中村作品の特徴を一つの画面上にみることができ、画風の過渡期を示す貴重な作品ともいえるかもしれません。

作品紹介2

作品紹介2


中村研一《夏庭》1963年 油彩・カンヴァス
小金井市立はけの森美術館所蔵
  戦後は自身のアトリエで日々制作に励み、周囲の自然の様子や人物など、たくさんの作品を残しました。本作品は小金井の自邸の庭を描いた油彩画です。作品の左手に見えるのは主屋の一部、ウッドデッキへと繋がる階段かと思われます。夏の強い日差しが作りだす明るい木漏れ日と、蒸暑さを忘れさせてくれる涼しそうな木陰の対比。中村の巧みな色づかいは、湿り気のある空気感をも見事に伝え、みる人の想像力を搔き立てます。アトリエは美術館が建てられた際に取り壊されていますが、この主屋は現在カフェとして活用されています。湧水と草木に囲まれた自然豊かな“はけ”の景色は今もなお健在です。