はけの森美術館

木陰 中村研一、自然を描く

見どころ

木陰

《木陰》1963年頃 油彩・カンヴァス

《夏の家》とともに、中村の風景画を代表する作品。葉の一枚一枚が丁寧に描き込まれ、植物の力強さ、生命力が感じられる。《木陰》とタイトルがつくが、中村が描きたかったのは光であろう。あえて照らされた葉を描かず、“木陰”にその先の光が想起される。中村の“光”への感性が巧みに表された作品といえる。
夏の家

《夏の家》1964年 油彩・カンヴァス

赤と白ストライプのひさしのある家は、中村研一の居宅(現美術館附属喫茶棟)。奥に進むにつれて暗く沈む緑の影が、より一層、夏の光と暑さを際立たせている。蝉の声まで聞こえてきそうだ。
婦人像

《婦人像》1963年 油彩・カンヴァス

椅子に座る女性は富子夫人。茶シロの猫は、愛猫の秀ちゃん。秀ちゃんが暴れてじっとしていないため、夫人は途中からクッションを抱いてモデルを務めたという。デッサンでは比較的野性味のある写実的な猫を描く中村だが、この秀ちゃんは少しぬいぐるみのような感じがして、かわいらしい。
仔猫

《仔猫》1951年 油彩・板

作品の裏書には猫の名前は記されていないが、中村の遺した記述と照らすと、毛色からおそらく「ポリー」かポリーの産んだ子の描写と思われる。ポリーは中村が1945年に小金井に引っ越した際、前の家主から譲り受けた猫。鼠を捕えて家を守り、子どもをたくさん産む元気な猫だった。

美術の森緑地

美術館の裏にある「美術の森緑地」は、季節に応じ姿を変える。
夏はまさに中村研一のみていた風景がそこにある。

夏の美術の森緑地

森緑地森緑地森緑地
夏は蚊などの虫がとても多いので、虫よけスプレー等をご用意する、肌の露出を避けるなど、各自対策ください。(月曜日は休園)

美術館ラウンジを特別公開

 平成元年(1989年)、中村研一の妻中村富子氏は、「中村研一記念美術館」(現在の小金井市立はけの森美術館)を設立しました。中村研一記念美術館は、1・2階の展示室や収蔵庫など美術館機能だけではなく、富子夫人の居住空間を備えた施設として建設されました。
 美術館ラウンジは、2階展示室と階段踊り場を挟んで隣接し、ちょうど、展示エリアと居住エリアとを分ける境界に位置しています。富子夫人のくつろぎの空間であると共に、美術館を訪問してくれた知人客人をもてなすための空間であったと思われます。
 内装にマントルピースをともなう装飾暖炉などを備え、その豪華なしつらえからは、往時の中村家の充実した暮らしぶりを垣間見ることができます。ラウンジの公開に併せ、中村研一の使用していた家具・道具類も展示しています。
 今会期中のみの特別公開となります。ぜひご覧ください。