
図1《婦人像》(1963)
一方「手遊び」とは(暇な時に)手を動かしてする他愛もないこと、の意です。つまり何でもない日常の中にも、創作があり気負わず心のままに行うことだからこそ、その人の感性を如実に反映するのです。

図2《出雲取手付猫面壺》

図3《備前紐付偏平壺 蟹図》
《出雲取手付猫面壺》(図2)や《備前紐付偏平壺 蟹図》(図3)からは、ルールにとらわれず自由に作りたいものを作る時間を、心から楽しんでいる様子がうかがえます。生前、中村研一が自作陶器を公募展などに出展することはありませんでした。しかし、だからこそ人の評価を気にせずに打ち込むことができたのでしょう。

図4《早春》(1962)
展示ではこのほかにも挿絵用のカットや絵はがきの原画、戦前・戦中期の軍の依頼に関わる油彩、人に贈った仔猫の絵など、中村研一の仕事と手遊びのさまざまな面をご覧いただけます。
図1《婦人像》で富子夫人が抱いているのは、愛猫"秀ちゃん"。秀ちゃんは愛称で本名は秀二だといいます。
とても優「秀」な猫でそれに研一の次の数字「二」をつけた名前だと、富子夫人がのちに語っています。